CALENDAR
S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>
ARCHIVES
CATEGORIES
消えた花


かつて花と呼ばれていたそれは、

つぼみと呼ばれる塊りが複数のヒダとともに開き、
様々な色と甘い香りを漂わせ、

景色や人々の暮らしを彩っていた。


けれども

それらの色は景色の調和を乱し、香りは空間を越えて拡散するし

更には、花から飛び散る花粉が、人に感染し害を与えると言われると

人々は我先にと目につく花を刈り取り、
焼き放ち、またある者は茎や根ごと抜き取り駆除し始めた。

景色は瞬く間に一変。

人々の求めていた、調和され、香りのない無害な世界になった。


それによって幸せな暮らしを送れるはずだったが、
ある日、鳥がバタバタと落下し始めた。

それを見ても人は、何が起こっているのかすぐには分からなかった。

ただ恐れ、
ある人は疑心暗鬼になり、
ある人は空に祈った。


人々が、その原因が花がなくなったせいだと知ったのは

世界から花が、一つ残らず消えてしまったあとだった。
| ある少年の旅物語 | 23:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
闇、病み


人は闇を恐れ

病みから逃れ


明るく

死の匂いのしない世界を作ろうとした。

が、

それはかなわなかった。


闇はより深く

病みはすぐ近くに

あり続ける。


火は心をも照らしてくれるが

傷ついた心を照らすほどの明るさは

持ち合わせてはいなかった。
| ある少年の旅物語 | 23:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
はるかかなた

はるか と かなた

は いつも隣りにいて

背中合わせで遠くを見ている。


はるかの見える景色は かなたには見えない

かなたの見える景色は はるかには見えない。


ただその日、

かなたが泣いているのは

背中から伝わってきて 気がついた。

でも はるかは そのわけを聞こうとはしなかった。


お互い ただ背中がくっついているだけ

会話をすることはない。


毎日 夕方の

太陽が沈むのと 星空が現れるのを

それぞれに見ていた はるかとかなた。


その日

かなたが去るのを

見守るだけでいいのか

はるかは悩み 一番星を見上げて初めて泣いた。


風が海に向かって吹き込む

波は変わらず呼吸する。


刹那

はるかとかなたは

初めて振り返って

手を取り合った。
| ある少年の旅物語 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
雪男

孤独では生きていけない雪男。

足の裏に陽気な模様をこしらえて

ノコノコと歩いてみたはいいが

雪が積もらなきゃ

ただの男で、足跡も残らん。

さぁ雪を降らせましょう

朝も
昼も
夜も。

孤独では行きていけない雪男

初めの一歩。
| ある少年の旅物語 | 23:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
楽園

人に見つかるわけにはいかない。

僕らは決めたんだ。

例え、日を全身に浴びられずとも、
例え、祝福も歓迎もされずとも、

静かなこの場所で生きていくことを。


この鉄格子の部屋が僕らの楽園。

いまはそれでいい。

いまは。
| ある少年の旅物語 | 23:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
心解け

そう

長く眠っていたのかもしれないし

一瞬目を閉じていただけかもしれない。


でも、僕の目の前には
見たことのない景色が広がっていたから

時間がずっとたっていたのだと

しばらくたってから気がついた。


ドーンと重苦しい白い塊が

ゆっくりと輪郭を後退させていく

それとともに僕は身体の感覚を思い出し
ていった。


白い塊、それは雪だった。

僕はその下に埋まっていたのだ。


それは冷たかった。

そして光は温かい。


「これは春というやつか...」


また少年の

あてのない旅が始まった。
| ある少年の旅物語 | 23:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
雪の底

すっと

息を止めて。


身体が柔らかくなるイメージを頭に描き。


足元から融けて雪の底へ。


音は雪の結晶に当たってカラカラと反響している。


見上げて見えた太陽は

水面からのそれと似ていたけれど

より、温かく

いとしく見えた。



| ある少年の旅物語 | 16:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
侵略者


絶えず攻撃は続いているのだ。


サラサラと浸透するように攻めては

ザアザアと打ちつけるように攻めては


突如冷たい壁面に現れ

空気中にモヤモヤと溶け込んでも見せる。


絶えず攻撃は続いているのだ。


ただその攻撃は

数百年の時をもって完了するから

未だ誰も攻撃だとは...


つゆ知らず。
| ある少年の旅物語 | 23:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
空センチメートル

さて今日も測りましょう。

まだ誰も測り終えたことのない

空の長さを。

1、2、3、4...センチメートル

5、6、7、8...センチメートル。

しかしあっという間に
夕方になってしまったから

今日の計測はここまでですよ。

14、15、16...センチメートル

ほらやっぱり見えなくなったでしょ。


夜が再び1センチメートルずつ消していく...


さぁまた明日

1から数えましょう。


| ある少年の旅物語 | 23:55 | comments(0) | trackbacks(0) |
りんごを食べたから

食べてはいけない果実。

ココではないどこかへ行くために

手を伸ばし口に運んだ。


すると見ていた世界は消え去り

暗く、しかし欲望に溢れた魅力的な

世界にたどり着いた。


後戻りはできない。

ヘマをしたら

今いる世界からも追放される。


右も左も分からないが

不可思議な術で出来ている町を

歩いて見るしかなかった。


| ある少年の旅物語 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
| 1/7PAGES | >>